同一労働同一賃金は、「同じ価値の仕事内容であれば、同じ賃金にする」という考え方に基づく賃金政策をさします。政府は賃金などの格差是正に向けて、「非正規労働者の正社員化・処遇改善への助成金拡充」「非正規雇用労働者待遇改善支援センターの設置」などを打ち出し、非正規労働者の底上げを政策の柱の一つに据えてきました。けれども、同一労働同一賃金は各国共通の一般的な考え方でありながら、日本では長年にわたって実現できなかった課題。その常識的とも言える賃金体系が構築できずにいるのは、日本の雇用形態に構造的な問題が存在するからです。同一労働同一賃金を実現するためには、正社員と非正規社員の双方の立場から、構造的な問題を見ていかなければなりません。
バブル崩壊以前、派遣社員やパートなどの非正規社員は、単純労働などを通して正社員のサポート的役割を主に担っていたため、低賃金で働くことはやむを得ない面がありました。しかし、現在(2016年)、全体の労働者のうち約40%を非正規労働者が占める状況になり、業務内容も正社員と同様のレベルが求められるケースが増えています。ところが実際には、日本の労働の主力へと変わったにも関わらず、業務量が同じ場合でも、非正規社員の給与が正社員より大きく下回るケースがあり、問題になっています。
賃金の格差が縮まらない原因として主に挙がるのは、以下の2点です。
(1)正社員と非正規社員とでは、与えられる責任の大きさが違う
(2)正社員は異動や残業があり、非正規社員と働く条件が異なる
正社員と同様の仕事内容であっても、責任や条件などの違いを理由に、同一労働同一賃金の実現にブレーキがかけられている現状があります。
一方、正社員も長時間労働を強いられ、時給に換算すると給与に見合わないケースが見受けられます。“名ばかり正社員”という言葉があるように、正社員という名前だけが与えられ、過酷な労働環境の中で長時間業務を余儀なくされている正社員もいるのが現状です。同一労働同一賃金を実現するためには、非正規社員の賃金引上げだけにスポットをあてるのではなく、正社員の働き方も改善していく必要があります。
正規・非正規の問題は、個々の企業で事情が異なるため、企業単位で問題を捉えると焦点が絞りきれなくなるという側面があります。そのため、問題を横断的に捉えることができ、個別の企業の事由に影響を受けない連合や産別の役割が重要です。産別が問題を提起し、非正規社員の賃金引上げ、正社員の勤務時間の短縮化などを各企業に働きかけることが、同一労働同一賃金の実現のためには求められます。