賃金などの労働条件は個々の労働者と使用者との合意により決められるのが原則です。しかし、労働者一人ひとりが経営者と交渉するのは現実的には難しく、労働組合が組織されている企業・団体では労働組合が代表して会社と団体交渉を行います。
労働組合による団体交渉は憲法28条の中の「団体交渉権」として保障されています。使用者が正当な理由もなくこの交渉を拒否することは不当労働行為、つまり憲法違反にあたります。一方、労働組合は組合員の代表として、職場の声をできる限り集約して交渉に臨むことが求められます。しかし現実は、組合員の声が労働組合に伝えられていないという指摘も少なくありません。
たとえば、連合は2014年11月に「ブラック企業に関する調査」を実施。自分の会社がブラック企業だと認識している人に「どこかに相談したことはあるか」という質問をしたところ、「職場の労働組合に相談した」と回答した割合は全体の0.9%という数字が出ました。職場環境を改善するためには、現場の声が労働組合に届く必要があるにもかかわらず、伝わっていない現状を真剣に受け止める必要があるでしょう。
労働組合の基本は往復運動。役員は現場に足を運び、相談会を開くなどして、組合員の声を聞く場を増やすことが大切です。また、機関紙などに「相談コーナー」を設ける、ホームページにメールフォームを設置するなどして、組合員が労働組合に対して気軽にアクセスできるような工夫も必要でしょう。現場の声が労働組合に集約する環境を整え、その声を把握し、職場の構造的な問題に置き換えて交渉に臨むことで、団体交渉は意味あるものになります。