定年延長

2017.6.5
65歳までの雇用を確保するため、高年齢者雇用安定法により義務化された制度。正確には定年引き上げの義務化ではなく、(1)定年の引き上げ (2)継続雇用制度の導入 (3)定年の定めの廃止 のいずれかを導入することが企業に義務付けられている。
「仕事がなく年金もない高齢者」を生み出さないための措置

 
 老齢年金の支給開始年齢は、度重なる法改正を経て60歳から65歳へと段階的に引き上げられています。60歳定年制を導入していた多くの日本企業では、年金支給開始前に定年を迎え、無収入となる高齢者が生じる恐れがありました。これを防ぐため、2006年・2013年に高年齢者雇用安定法が改正され、65歳までの雇用を確保することが企業に義務付けられました。
 
 2006年の法改正では、「定年の引き上げ」「継続雇用制度の導入」「定年の定めの廃止」のうちいずれかを企業が導入することが義務化されましたが、「継続雇用制度」を選択した場合、企業の負担を考慮し、事業主が労使協定により対象者を限定できる仕組みでした。2013年の改正ではこの仕組みを廃止、継続雇用を希望するすべての人を対象とするよう定められました。ただし、企業の負担軽減のため2013年から2025年にかけて3年ごとの経過措置が認められています。すなわち、2016年3月末までは61歳未満の希望者全員、2019年3月末までは62歳未満の希望者全員…と、1歳ずつ雇用義務年齢を引き上げていくことが可能です。この経過措置は年金支給開始年齢の引き上げ時期と合致し、無年金・無収入の期間が発生しないように設定されています。

 
 「定年の引き上げ」「定年の定めの廃止」は、人件費の急激な増加が伴うため、資金力のある企業を除けば導入が困難なのが現状です。このため「継続雇用制度」を導入し、一度退職してから非正規で再雇用する企業が大半を占め、60歳以前と業務量・業務内容が変わらないのに給与が減額されるケースが一般的です。また、管理職に就いていた人がポストから外れることにより意欲が低下する問題も発生しています。
 
 定年延長の問題解決を図るためには、60歳以上の社員の人事管理のみに目を向けるのではなく、60歳定年制を前提に設計された人事制度全体を見直す必要があります。労働組合は、高齢社員の声を聞き実情を把握することに加え、定年を延長することで発生するメリット・デメリットを現役世代からも聞き取り、人事制度の改善を企業側に提案する役割を担っています。高齢社員と現役社員の双方が活躍の場を持てるよう、労使が協力して制度改革・意識改革に取り組むことが求められます。

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