情報労連 明日知恵塾

2014.5.1【現場レポート

明日を担う大学生に向け、リアルな“働く”を伝えたい

仕事現場の実情を伝え
入社後のギャップを解消

 第1回目の明日知恵塾が開催されたのは、今から約8年前の2006年6月。就職前の大学生に対し、仕事現場の生の声を伝えることを目的にスタートした。情報労連が大学生に働くことの実情を伝える背景には、新卒の新入社員たちが、入社後の現実と自分の希望とのギャップが埋められず、早期に退職してしまう問題があった。

「就職後のギャップを埋めたい」と
安藤京一組織局長

 明日知恵塾の意義について、情報労連の安藤京一組織局長は「就職活動において企業側は、自分たちの良い部分のみを伝える傾向にあるため、入社後に“こんなはずじゃなかった”と新入社員が悩み、辞めてしまう事例を多く見てきました。そのギャップを少しでも埋めるためには、組合員が仕事現場の実情を正確に伝える場を設ける必要があったのです。スタート時には、なぜ労働組合が大学生をサポートするのか、といった批判的な反応もあったと聞いています。けれども、結果をすぐに求めるのではなく、“働くこと”の意味を学生たちが真剣に考えることをきっかけに、労働組合に少しでも関心を示してもらえればと思っています」と説明する。

結論を求めずに“一緒に考える”が基本

 スタートから8年、年4回のペースで回数を重ね、今年で33回目を迎えることになる。その間、労働環境は厳しさを増し、若者の労働力を酷使する「ブラック企業」が社会問題化される世の中に。若者に働く真の姿を伝える明日知恵塾は、先見の明を持った取り組みと言えるだろう。
 それでは、東京仕事センター(東京都千代田区)で2月1日(土)に開催された第33回明日知恵塾の様子を見てみよう。

大学生との対話を通して
仕事を見つめ直すきっかけに

 今回の参加者は大学生20名、社会人12名の計32名。明日知恵塾は2部構成になっていて、現場の仕事内容を伝えるプレゼンテーションと大学生と社会人が意見を交わすグループディスカッションに分けて進められる。

通信建設業の裏話を披露する中村浩二さん

 プレゼンテーションに登壇したのは、通建東京和興支部の中村浩二さん。「通信建設業について」をテーマに、普段行っている仕事をわかりやすく解説していく。電線の設置基準は、路面から5メートル以上など、普段は知ることができない裏側に、大学生も社会人も興味津々の顔つきだ。何気なく見ている電線が、さまざまな人によって守られていることが実感でき、働くことの意味を考えさせられるプレゼン内容だ。

 グループディスカッションは、大学生と社会人がAからFの6班に分かれ、「社会人に必要なコミュニケーション能力とは?」をテーマに話し合いがスタート。今回進行役を務めたのは、跡見学園女子大学の禿あやみ先生。禿先生は、「コミュニケーションの失敗談」「コミュニケーションの高い人とは?」などを議題にあげながら、話しやすい雰囲気をつくっていく。

「営業的なセンスだけがコミュニケーションスキルではない」と禿あやみ先生

 明日知恵塾の特徴は、一つの回答を求めないことにある。社会人が学生に対して一方的に“教える”のではなく、“一緒に考える”スタンスをとっているため、ときには冗談も交えながらディスカッションは進められる。

 それでは、「コミュニケーションの高い人とは?」であがった代表的な意見を見てみよう。
・相手と認識を合わせ、上手に調整しながら話が進められる
・相手に直接会って、タイミングよくホウ・レン・ソウができる
・相手から情報を得られる質問ができる

グループの意見をまとめ、学生が発表

 禿先生は、グループディスカッションの内容を受け、議論に上がらなかった別の観点を示し、明日知恵塾を締めくくった。
 「社会人にとってのコミュニケーション力は、流暢に会話ができる営業的なセンスだけに着目されがちですが、文章表現が正確、手話ができるなども、コミュニケーションの一環に含まれます。上手に話せるようになることだけが、ビジネススキルと捉えないほうがいいでしょう」
 明日知恵塾を終え、安藤局長は、「明日知恵塾は大学生へのサポートを目的にスタートしましたが、参加した組合員にとってもプラスの効果をもたらしています。仕事内容を学生に話すことで、普段の業務を見つめ直すきっかけにつながり、新たな発見があるようです」と言い、想定外の効果があったことを明かす。
 情報労連では、“明日Earth”をキャッチフレーズに、明日知恵塾だけでなく、環境保全、平和運動などの社会貢献活動にも注力していく考えだ。

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