連合東京/子ども・若者支援プラットフォーム(HOPE〔ほっぺ〕)

2022.1.31【現場レポート

困っている子どもや若者を支援する
新たなプラットフォームを構築

日本労働組合総連合会東京都連合会(連合東京)は2021年11月、一般社団法人 東京労働者福祉協議会やNPO法人 キッズドアなどとともに、都内在住の子どもたちや若者たちの学習支援や就労支援を行う団体「子ども・若者支援プラットフォーム(愛称:HOPE)」(以下、HOPE)を立ち上げました。設立の経緯や現在の活動などについて、代表理事を務める連合東京の斉藤千秋氏にお話を伺いました。

 

― 「HOPE(ほっぺ)」という通称がかわいい響きで、覚えやすい感じがあるように思いました。
 最初は英語の“HOPE(ホープ)”がいいなと思っていたのですが、“ほっぺ”の方がいいのではないかという意見が出てきて、「HOPE(ほっぺ)」になりました。
 

― そもそも、この「HOPE(ほっぺ)」という新しいプラットフォームを立ち上げるきっかけは何だったのですか?
 コロナ禍になって、子どもの貧困の問題がテレビの情報番組で取り上げられたり、子ども食堂の運営が大変というニュースが報じられたりするのを見て、私たち連合東京が何か支援できないかと思ったのがきっかけです。連合東京のブロック地協通じて子ども食堂を支援している議員さんがいらっしゃるので、その方に紹介していただいたり募集をかけたりして子ども食堂とつながりを持ち、2020年7月ごろから支援を始めました。
 当初は連合東京の構成組織からカンパ金を集めて寄付をしたりしていました。しかし、支援をする中で子ども食堂の実態を伺っていくと、どうも子ども食堂に集まってくる子どもたちや若者たちが必ずしも経済的な支援を必要としている人ばかりというわけではありませんが、学習習慣がなく、結果、貧困の連鎖になっているのではないかということに気づきはじめました。子ども食堂にご飯を食べに来ている子どもたちが、せっかくなら学習にも取り組めるような環境をつくっていきたい。学習支援をすることによって貧困の連鎖を断ち切るきっかけになるような取り組みをNPOなどと連携してやっていきたいと思ったのが、このプラットフォーム立ち上げのきっかけです。
 

― 連合東京単独での支援が始まりのようですが、新しい団体を立ち上げたことに理由はあるのでしょうか?
 連合東京だけでやってしまうと、連合東京の活動・運動の延長線でしかありません。このHOPEで一緒に活動している福祉団体、福祉協議会、NPO法人と対等な位置づけで推進していくには、連合東京として活動・運動を続けていくよりも、連合東京とは違う団体を作って取り組んだ方が、今はこの活動に参加していないNPO法人や経営者団体、東京都や市区町村からの支援も受けやすくなり、活動領域を広げやすくなるのではないかと考えました。
 連合東京は労働組合の集まりであって、そこで組まれた予算や集まった資金は運動の推進以外のことには使いにくい面もあります。それとは別に活動資金を集めて、身近で困っている人に手を差し伸べ、迅速に対応できるような活動ができる組織を構築・運営していくのが最善策だと考えました。ゆくゆくは法人化して取り組んでいきたいと思っています。
 

― 子ども食堂の皆さんや他の参加団体の皆さんは、どのように参加されていますか?
 子ども食堂の皆さんは自主独立で、各々のNPO法人で活動されていて、運営ノウハウを豊富に持っていらっしゃいます。HOPEの運営ノウハウも、私たちがやりたいことと子ども食堂の皆さんがやりたいことを融合したり、時には選択して組み合わせたりしながら取り組んでいかないといけないと思っています。
 また、そのNPO法人の皆さんの、連合や労働組合への期待度が、私たちが思っている以上に高いように感じていて、私たちはそれに応えていかないといけないと思います。例えば、若者の就労支援を行う時には、私たちの働いている現場を受け入れ先にして職業体験や見学会を実施することが重要です。連合東京の加盟組織の皆さんには、ぜひ受け入れ先として手を挙げてもらえたらと思っています。
 

― 現在はどのような活動をされていますか?
 現在19の子ども食堂とつながりを持っていて、2021年12月から、足立区と目黒区の子ども食堂の学習支援を始めたところですが、子ども食堂は公民館やコミュニティセンターなどの公共施設を借りて開いているところが多く、このコロナ禍でその公共施設を借用できず、子ども食堂を開けなくなっています。当然NPO法人の方々の活動もストップしてしまう。喫緊の課題としては、NPO法人の方々が、どんな状況になっても活動できるベースキャンプのような場所をつくらないといけないと考えています。空き家や空き店舗などで最適な場所を探して、支援に協力的な方に管理していただく。そのような形で継続的に開ければ、困っている子どもたちや若者たちの居場所にもなります。
 ただ、私たちがよかれと思って、例えば支援物資を送ったりボランティアを派遣したりしても、状況によっては受け取る側が困ってしまうこともあると思います。必要とされるものを、必要なタイミングでサポートするために、現在は連合東京のブロック地協を窓口として連携している19の子ども食堂の方々の活動状況を確認し、どんな支援が必要かを見極めながら支援を進めている状況です。
 

― これからの活動期間の目安を「10年」としています。その理由を踏まえながら、今後の活動について教えてください。
 10年活動をすれば、子どもの貧困や経済的困窮といった、現在起こっている社会的な問題は解決されて、私たちが活動しなくても社会的なインフラの中で変えていけるのではないかと考えています。私たちは連合東京の活動の中で政策制度の実現活動としてそれをやっていける立場にあるので、この10年で社会を変えていこうという気概で動いています。その間にどうしても網から漏れてしまう方々を、私たちのセーフティネットで支えていきたいと思っています。
 このプラットフォームでの活動は、今の社会が抱える課題の解決に向けて継続的に取り組んでいく必要があります。労働組合・組合員の皆さんがこのプラットフォームの活動に目を向けて、主体的に動いてもらえるように、意識改革の促進や、そのための啓発活動・情報発信をしていきたいと考えています。
 私たちや一緒に参加しているNPO法人の方々、あるいは現在進めている支援活動に対して「何かできることない?」「これができるよ」と声をかけてくださる方々、そして組合員の皆さんをいい形で巻き込みながら、子どもたちや若者たちの居場所・行き場所を提供し、学習支援や就労支援などを行っていく。それがHOPEの役割と考えています。
 

カレンダーには障がいを持ちながらもアート制作に取り組む方々
の絵を使用。「いろんな方の協力で成り立つ団体にしたいです」

― ありがとうございました。
(取材日:2022年1月18日)
 

HOPEのWEBサイトもご覧ください
(デザイン:アプレ コミュニケーションズ)
https://hope-tokyo.jp/

 
 
 

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