日本郵政グループ労働組合「福祉型労働運動/JP smile プロジェクト」

2014.10.9【現場レポート

“新たな絆&ふれあい社会”の創造をめざし、労働組合の社会的責任を果たす

地域社会に密着したJP労組ならではの
組合員一人ひとりが主役となる運動

高齢者宅に寄贈する手作りポストの製作
(沖縄/北部支部)
事業と社会貢献をつなげるのも福祉型労働運動の大きなテーマ
写真提供:JP労組

 「福祉型労働運動/JP smile プロジェクト」は、日本郵政グループ労働組合(以下JP労組)による社会貢献活動の総称。全国約2万4,000局のネットワークを構築し、地域に根ざしたサービスを展開する郵政事業に働く、約24万人が集うJP労組ならではの運動だ。人と人とが助け合い、地域社会の絆を深め、誰もが元気に安心して暮らせる社会を創る。“新たな絆&ふれあい社会”の創造という言葉で表される理念のもと、労働組合の社会的責任を果たすことで「真に組合員の幸せ」の実現をめざしていく。これまでの活動例を表中に記したが、実際の活動は主に支部(一定規模の地域ごとに設置)単位でなされている。
 

福祉型労働運動が想定する10の活動領域と、代表的な活動例

 
1.高齢者、障がい者支援、健康・医療に関する運動
  障がい者作業所のバザー支援 など

2.子育て支援、子どもの安全・安心に貢献する運動
  子どもたちへの交通安全教室 など

3.雇用の改善、働く人の支援に関する運動
  児童養護施設の子どもたちの郵便局での就労体験支援 など

4.地域おこし、地域の安心・安全・活性化に関する運動
  マラソン ボランティア+救急救命士講習  など

5.郵政事業の特性を生かした運動
  小学生への手紙・はがき書き方教室 など

6.自然災害からの復興・復旧に関する運動
  心ひとつに運動 – 東日本大震災からの復旧・復興支援 など

7.環境問題、自然環境保護に関する運動
  芝桜を咲かせよう活動 など

8.文化・スポーツ・イベント活動による貢献運動
  「ポストのある風景」写真コンクール など

9.途上国支援等国際ボランティア活動
  アジア連帯委員会への衣類、募金寄付活動 など

10. 組合員間の相互扶助、学びの場づくり
  福祉型労働運動に関する学習会 など

 
 労働組合の基本は組合員の雇用と処遇の維持・向上だが、それを担保する郵政事業の発展は地域社会の存続・発展なくしてありえない。また、これからの労働組合運動を考えたとき、労組としての社会的責任を踏まえた運動が必要になる。この点についてJP労組中央本部の担当役員、須間等総合政策部長は次のように語っている。
 「郵政事業は地域とともにあり、地域で活動することは私たち労働組合にとっても基本です。また、民営化以前、郵政グループの社員は公務員でしたから、地域の皆さんを大事に思い、社会貢献活動もさまざまに行ってきました。その意味で、福祉型労働運動は、JP労組のスタンダードな運動となることをめざしています。なお、同運動は本部主導で画一的に行うのではなく、地域のニーズを鑑みて自分たちで考え企画し、実施する。ボトムアップ型の運動です」。
 福祉型労働運動は、地域社会に貢献するという目的の他に、組織活動にとってもメリットの大きい運動となる。たとえば、新しい活動領域の広がりで、未加入者の組合加入が進んだり、組合員が身近な社会的課題への取り組みを通して労働運動に関心を抱くことが増えてきた。また、福祉型労働運動は、自ら考え行動する運動であることから、組合員の自主的な成長・自分づくりに繋がるという効果もある。実際、参加した組合員の多くは「やってよかった」と達成感を口にし、「ありがとう」という地域の人々の言葉に満足感を覚えるケースが増えている。

福祉型労働運動をリードする 須間 等 総合政策部長

 「今後の労働組合は、人材育成を重視しなければなりません。しかし、組合員、特に若い人たちは、運動を楽しいなと感じることが少なくなっています。組織は、若い人たちの発想を活かすことが大事です。我々は福祉型労働運動をきっかけに若い人たちの育成を図るとともに、世代間の交流も進めていきたいと思います。よくやってくれたね、良かったねと声をかけることで、次の運動につながっていくのではないでしょうか」(須間部長)。

運動の理解浸透を図り
全国フォーラムを2015年5月に開催

 福祉型労働運動は、JP労組発足以来の取り組みだが、当初は組合員への理解浸透に苦労したという。「福祉型労働運動はまず自身が実践してみる。そうして『あっ、こういう運動なんだ』と理念や目的が理解できれば、確信を持って取り組める運動です。中央本部から地本(地方本部)、地本から支部というようにしっかりと伝えていけば、多くの組合員に参加してもらえると考えています」と言う須間部長。「全機関・1Action(実践)」の実現のためには、各機関担当者が運動を理解し、確信を持つことが最初の一歩となる。
 去る9月12日には『2014年度福祉型労働運動地方担当者会議』が東京・上野にある中央本部で開催された。地本の担当者の理解を深め、またお互いの現況を意見交換するこの会議では、福祉型労働運動のアドバイザーを務める弊社代表鹿野和彦が講演。当運動の理念と、推進させる方策について改めて明示した。続いて、須間部長から2013年度の運動を振り返り、2014年度の活動計画が示される。その後の意見交換では、地本担当者として、いかに運動を推進していくかについて議論が交わされた。

『2014年度 福祉型労働運動地方担当者会議』
弊社代表の鹿野が基調講演を行う

 会議を終え、須間部長はこう話した。「結成時から試行錯誤しながら進めてきた福祉型労働運動は、実践支部の数も着実に増え、地域からも一定の評価がされつつあります。ただどんな運動でも何のために、誰のために行うのかを意識し続けることが大事です。一部の組合員だけで終わらせてしまっていないか?地域の方々と連携できているのか?常に次のステップを考えて継続していくことが大切です」。
 
 JP労組は来春、2015年5月15~16日に、福祉型労働運動の理念・意義と、これまでの取り組み成果を組織内外に発信することを目的に、『JP smile プロジェクト・第1回全国フォーラム』を開催する。場所は、阪神・淡路大震災から20年目を迎える神戸とし、東日本大震災の復興とあわせ“新たな絆&ふれあい社会”の創造に対する思いをさらに高める狙いだ。わが国最大の単組であるJP労組の取り組みに、今後さらに注目していきたい。
 

福祉型労働運動の理解浸透を推進するためのパンフレット(左)と、
事例集『2013年度 チャレンジ支部実践レポート』(右)
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